「第8回 仙台城石垣修復工事専門委員会」傍聴記

 七海 雅人

《耐震用ネット材の導入をめぐり白熱の議論!》

 8回目の石垣修復委員会が、6月26日、委員全員出席のもとで開かれました。5月に出された艮櫓「復元」計画撤回という藤井市長の決断後、初の委員会ということで注目されましたが、各委員からは、これまでと同じように伝統工法・現代工法双方の立場からの率直な意見が交わされ、聴きごたえのある委員会となりました。

 はじめに加藤建設局長から、市長の事業変更の表明を受け、石垣修復については、安全性の重視を基本としながらも、文化財としての価値を一層高め、よりよい事業にしていきたい、という挨拶がありました。また新谷委員長からも、前回の委員会では艮櫓の基礎のために石垣修復に支障をきたすという議論となったが、今回の櫓撤回により、伝統工法の重視という方向性を堅持することができる。関係各位のご努力・ご苦労に感謝したい、という挨拶がありました。

【修復工事の進捗状況】
 青葉山公園整備室より、6月24日現在までの進捗状況が報告されました。これまでに1,651石の石材が積まれ、6パーティー総勢24人の石工さんが従事しているとのことです。1か月300石のペースに上がってきており、新補石材のエリアもこれからは少なくなってくる。また大鳥居に面したA面石垣の積み直しに着手すれば、石工さんのパーティーももっと投入できるので、予定通り平成16年3月までの工事終了に、今のところ変更はないそうです。
 また文化財課からは、積み直しの始まった復元2期石垣の記録化の内容と、工事道路の整備のためにあらたに盛土層部分の発掘調査を行ったところ、2期盛土における地割れ痕(地震による地滑り痕)が検出されたことなどが報告されました。
 現場における地道で丁寧なお仕事は、日々続けられているのです。

【A面石垣の修復方法について】
 今回の委員会では、3つの議題が検討されました。一つ目は、これからはじまるA面石垣の修復方法です。この面は、傾斜地に沿って石垣が構築されているため、基礎地盤・裏込層の沈下・変動が激しく、もっとも変状著しい面です。そこで公園整備室からは、もう一段石垣を解体して積み直し、そこへ最小限、新補石材を充填する。また、新規解体部分に存在している構造的に弱い石材については、石材数の変更や加工など特別な対策を講じたい、などの提案がありました。委員からは、(1)裏込の陥没・ズレをどうくい止めるのか、(2)石材の水平的な積み直しをどう講じるのか、(3)地盤と石材が密着する部分の構造を知ることが大切であり精査を必要とする、などの意見が出され、公園整備室へは、次回の委員会で裏込層を中心とするより具体的な修復案を提示することが要望されました。
 新たな解体作業に際しては、その下部の調査を行った上で、石垣内部構造の修復対策が練られるそうです。この調査の過程で、また一つ仙台城石垣の秘密が明らかになるのではないかと、気持ちは高まります。

【安全対策について】
 二つ目の議題は安全対策です。公園整備室からは、(1)盛土の地盤改良、(2)基礎地盤沈下防止のための抑止杭の設置、(3)裏込の強化のための粒度改良、(4)裏込の沈下防止のための耐震用補強ネットの敷設、が説明されました。議論の中心となったのは(4)です。伝統工法、現代工法双方の立場から、このネットの導入について激しいやりとりがありました。
 伝統工法を重視する委員から問題にされたのは、石垣は背面構造を含めた上での構造体なのであり、そこへ「異物」を入れることには疑問を感じる、地震が起きて裏込層に不等沈下が発生した場合、均等かつ水平に層状に敷かれたネットは、本当に効力を発揮するだけの強度を保てるのか?、石垣のはらみは裏込層の沈下によって生じるわけだが、その沈下をネットにより無理に矯正しようとした場合、予想外の別の問題が生じる恐れがあるのではないか?、といった危惧でした。
 これに対して公園整備室は、財団法人土木研究センターでの強度・耐久試験の概要を説明し、理解を得ることにつとめました。また現代工法を専門とする委員からは、公園整備室の提示した「必要安全率・地震時1.20以上」という現代工学の実績の上に成り立つ試算数値の確保は絶対に譲れない、この補強案がだめならば(対抗案を)どうしたらよいのかという話になってしまう、といった厳しい意見が出されました。ほかにも、ネット敷設の際の幅や厚さに関する細かな数値についての質問がありました。
 このやりとりに関する委員長の仲裁的な意見は、つぎのとおりです。「伝統工法は動的な形態についての研究蓄積がない。石垣の空積みは、石材が一つ一つ独立した因子であり、地震の時の動きは明らかにされていない。絶対ということは残念ながら保証できない以上、なんとか保存したいということからいえば、「溺れる者は藁をもつかむ」という気持ちだ。現在の学術的な成果の未熟さは痛感している上で、つまりは80%の思いで、ネットの導入はやむを得ないと考える。要は、伝統技術のあり方をわからなくするような形で保存修復を行うのではなく、平成の時はこのように修復したのだな、と後世の人がわかるような形で事業を進めなければならないのだ。各地で石垣の修復は行われているが、補強対策に関する報告はまとめられていないのが現状だ。だからこそ仙台城ではきっちりと記録にとどめ、城郭石垣の修復をめぐるこれからの研究のための資料を提供していきたい」。
 これまでも折々に触れられてきた話題ではありますが、石積み面積の3割が完了し、艮櫓問題もひとまず解決した今、いよいよ核心的な議論が展開された、という感想です。たしかに難しい課題だと思います。しかし、こうした話し合いが正面きって行われたこと自体、画期的なことなのではないでしょうか。今後もこの種の問題は、委員会で繰り返し提起されることが予想されます。真摯な議論が継続され、石垣修復事業において、ベストの「仙台城方式」がめでたく誕生することを願うばかりです。

【2期石垣の復元方法について】
 三つ目の議題は、2期石垣の復元についてです。公園整備室の説明では、11石の積み上げが完了したそうです。野面積の雰囲気を再現するために苦労しており、新補石材1石のはめ込みに1か月を要したという話が披露されました。もとの姿にできるだけ近づけて修復することが目標であり、石材はできるだけ加工しないように努力しているとのことです。
 委員からは、(1)今回の市長判断により、1期・2期石垣の復元工事は、さらに慎重を要するものとなった、(2)穴太積みの特徴は石の表情を大切にすることにある、大きな石材の周りを小さな石材が取り囲むという姿だ、野面という点を十分考慮して、ぜひとも表情を大切に作業をしていただきたい、などの意見が出されました。また委員長からも、新補石材の加工については安定化を重視するかどうかの議論となる、現場の方が自信ある積み方でやっていただきたい、というエールが送られました。

 以上、今回の委員会では、艮櫓の建設撤回による仕切直しという雰囲気もあり、前回同様、活発な討論をうかがうことができました。皆で智恵を出し合い物事を進めていく、という気持ちが、とてもよく伝わってくる話し合いでした。
 それゆえに私たちもまた、市民注視の委員会というスタイルを引き続き維持し、これからも共に盛り上げていかなければならない、という思いを強くします。お時間の都合のつく方、どうぞ次回は、ぜひともライブで委員会の様子を体感してみてください。

 


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TOSHIAKI Yanagihara tyana@sal.tohoku.ac.jp