第7回 石垣修復工事専門委員会ウォッチング

(02.3.19)平川 新

新谷委員長、市長に艮櫓の再考を強く促す
   委員からも批判が続出

 昨日の仙台城跡調査指導委員会に続き、本日の石垣委員会も最大のクライマックスとなりました。艮櫓の基礎杭(パイル)を打ち込むことについて、委員から次々に批判が出され、新谷委員長はついに、パイルの問題はこの委員会ではクリアーできないので、ちゃんと市長に伝えるようにと、市当局に強く再考を促すにいたったのです。

「艮櫓を建てると石垣の安全は保証できない」 

 艮櫓問題で口火を切ったのは浅田委員でした。盛り土の補強方法について提案した議題のところで、百年の杜部長が、耐震用補強ネット(ジオテキスタイル)は艮櫓の基礎杭と関係があり、現在、その影響関係について検討しているので次回検討してほしいと発言したことを見逃さず、艮櫓のパイルが入ることを前提に補強を考えているのかと浅田委員がクレームをつけたのです。この委員会はあくまでも文化財を遵守して安全性を確保するということでやってきたのに、パイルを打つとなると安全性は保証できない、それをこの委員会で議論してよいのか、と確認を求めました。
 そのうえで浅田委員は、艮櫓を建てたら石垣が崩れるか崩れないか断言できない、艮櫓委員会の解析も単なる計算だと一蹴し、崩れたときのデメリットは極めて大きいではないかと強く再考を促しました。石垣が崩れると文化財は台無しになり、安全性もダメになる、50億も税金を使ってそれがパーになるではないかと、その影響の大きさを指摘。もし安全性を保ったとして、ニセモノ櫓を建てて経済効果を見込めるのか、私は非常に疑問に思うと、艮櫓建設がもたらすデメリットの大きさに注意を喚起しました。

「パイルを打てば国指定史跡にはならない」

 北垣委員も、我々はこれまで伝統技術・文化財ということでやってきたが、杭を打つということになれば、我々は何をやってきたのかということになると当局を厳しく批判しました。
 ーー市長自身が「石垣の本質的な価値を損なうことなく」と言っているではないか。仙台市民にとっても日本にとっても大事な一期・二期石垣はそのまま残さなければならない。そのまま残すということは、パイルを打ち込むということではない。パイルを打ち込むことは「本質的な価値を損なう」ことだ。パイルを打ち込むなど、とんでもない話だ。国の史跡指定を考えたらパイルを打ち込んだら終わりだ。国の史跡にはならない。ーー

 この思いは多くの市民の共有するところです。当局は「石垣の本質的な価値」を極限まで矮小化して、艮櫓新築を正当化しようとしていますが、北垣委員のご指摘の通り、パイルを打ち込むことそれ自体が、本丸跡の文化財としての「本質的価値」を破壊することになるのです。 

「開府四百年に、なぜ市民を悲しませるのか」

 百年の杜部長は、その話は次回以降にと、なんとか話題を断ち切ろうとしますが、ここまでくればもうとまりません。鈴木委員が思いのたけをぶちまけたのです。

 ーー直径2メートルものパイル6本をタテ・ヨコに張り巡らすのは、4、5階建てのビルの枠組みと同じだ。そんなものを本丸の下に打ち込んで本丸は記念物といえるのか。これでは史跡としての資格を間違いなく失うことになり、とんでもないことだ。
 考古学も歴史学も実証の学問だ。実証できないものを作れば歴史を捏造したという批判に反論できない。誰一人証明できない艮櫓を建てるということは、真実と真理を否定することだ。艮櫓は由緒のある仙台城に建てるのだから歴史の表現そのものだ。偽った表現は偽証になる。気軽に新しいものを作るのであれば山の中を造成して、そこに造ればよい。
 馬に乗った伊達政宗を牛に乗せようとしているのと同じだ。馬も牛も四本足で似ているからいいだろうということにはならない。それだけではなく、政宗の乗っていた馬(仙台城)を壊そうとしている。牛に乗せた政宗を見て喜ぶ人がどこにいるのか。誰が賞賛するのか。
 仙台城は天下に冠たるものだ。しかもこの計画は危険だ。艮櫓の重量は500〜600トンらしいが、機関車デコイチの重量は125トンだ。これを何台も上にあげるのと同じことだ。しかも重量は谷側にかかってシーソーのようなり、地震がくればパイルは引っこ抜けるだろう。何年かたてば必ず、はらみ、くぼみ、変形、崩壊する。しかし建物が邪魔になって修理もできない。すると櫓も取り壊しということになる。誰がこの費用を負担するのか。つまり造らないほうが得策だということだ。
 6本の杭は史跡を台無しにする。発掘調査で仙台城の比類ない価値が発見された。それを艮櫓が台無しにする。取り返しのつかない事態だ。いま仙台市の見識が問われている。仙台の名誉と文化財を失おうとしている。
 開府四百年というのは百万市民のお祝いではないか。お祝いは喜びでなければならないのに、なぜ悲しみを与えるのか。21世紀を担う青少年にこんなものを残してよいのか。青少年を意識すべきだ。
 政令指定都市の仙台が虚偽のやぐらの見本を造れば、これまで地道に文化財を守ってきたほかの自治体に、はかりしれない悪影響を及ぼす。仙台がやるのならオラもやろうという自治体が出てくる。そうなった場合に、どう償えるのか。
 史跡をまわると、どこにもボランティアガイドがいる。白河では三階櫓を説明するときに、必ず、「史実に忠実に復元しました」と、顔を輝かして説明する。仙台のボランティアは何というのか。「史実ではありません、復元ではありません」というのか。
 国指定にする前に、まず市の指定にすべきだ。市の指定にして保存活用の委員会を立ち上げ、活用の仕方、復元の仕方を検討すべきだ。叡智を傾けて国も県もいいと言い、みんなが喜ぶようなことをやってほしい。どうか上(市長)のほうまで届くように特段の配慮を求めたい。
 大塚久雄氏のことばを紹介しておく。「ひとはいつも真理への畏敬の念がなければ、事実を素直に承認する態度も、正しいことを勇敢に主張する態度もなくしてしまう」。大事なことばだ。
 もう一つ、格言を紹介しておく。「覆水、盆にかえらず」。これは仙台のために用意された格言だと思う。ーー

 鈴木委員のお話が終わったとき、傍聴席から思わず拍手が鳴り響きました。すばらしいお話しでした。文化財保存にかける鈴木委員のあつい思いが凝縮されたことばでした。
 黙って聞いていた市役所の方々は、どう受けとめたのでしょう。それでもあなたたちは、艮櫓を造ろうと思うのでしょうか。建てたくないが藤井市長や助役が建てると言っているから、とおっしゃるのでしょうか。それなら、どうぞ勇気をふるって市長や助役に進言してください。もう歴史を捏造し、文化財を破壊することはやめましょう、と。それが仙台市民と仙台市の将来につながるのですから。市民だけではなく、専門家に方々もこれだけ反対しているのですから、強行することだけは、どうぞおやめください。私たちは、市役所の方々が白紙撤回する勇気をもってくださることを、心から期待しています。 

「艮櫓問題は、この委員会では認められない」

 新谷委員長も立派にまとめてくれました。艮櫓の問題はこの委員会では、たぶんクリアーできないだろう。艮櫓の話になると、今までこの委員会でやってきたことが壊れてしまう。市長さんにはよく伝えてほしい、と。

「建設局長、保護・保存の観点から検討を」

 きょうの委員会の熱い意見表明をうけて、建設局長も、艮櫓についてはいつか議論して頂くことになるが、いまは、保護する保存するという観点で検討してほしいと述べました。石垣を保護・保存する観点とは、艮櫓は建てないということと同義だということを十分承知されたうえでの発言だと思います。きょう、局長として言うことができるのはこれが精一杯のことばだったかもしれませんが、石垣を守りたいという委員諸氏の熱い思いは、局長の心にも十分にしみこんだのだと思います。 

 


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TOSHIAKI Yanagihara tyana@sal.tohoku.ac.jp