(02年3月18日)平川 新
たいへんな委員会でした。傍聴席から何度、大きな拍手をしようかと思ったほどでした。市は艮櫓を断念せざるをえないところまで追い込まれつつあるといえるでしょう。
市当局は、石垣の積み戻しにあわせて艮櫓の六本のコンクリートパイルの基礎工事を進める予定でしたが、斎藤委員長は、同委員会での調査検討結果が出る前にパイルの基礎工事に着手するような計画はおかしいと厳しく追及し、当局もついに、同委員会の調査と評価が出るまでは着工しないと約束することを余儀なくされました。この発言を引き出すまでの斎藤委員長の追及ぶりは、鬼検事顔負けの鋭いもので、あいまいな答弁でごまかそうとする当局を許しませんでした。
この約束がもつ意味は重大です。当局は六本の基礎杭(パイル)を打ち込む部分の発掘調査について、パイルごとにわずか2メートル四方ずつしか調査をしない計画を公表していました。もちろんこれでは発掘調査などとはいえないものです。三期石垣の積み戻しが進行していますので、これにあわせてアリバイ調査をやり、埋め戻し作業と併行してパイルの基礎工事をやる計画だったのです。
要するにアリバイ調査だけをやって艮櫓建設を強行するつもりだったのですが、同委員会がそのようなアリバイ調査だけで納得するわけがありません。とうぜん同委員会は、艮櫓の基礎部分の全面調査を指導することになると思います。そうすると、いくら三期石垣の積み戻しが進んでいこうと、パイル工事に着手できません。
観光交流課長は、石垣工事をストップさせることになると抵抗しましたが、百年の杜部長は、調査検討結果が出るまで石垣工事をストップするか、石垣工事は進行させてパイル工事をあとからするか、いま判断はできないと答えていました。
石垣を積み上げたあとにパイル工事をやるということは、また同じところを掘り返すことになり、たいへんな工事になります。費用対効果からみても考えにくい工法になるでしょう。ということは、事実上、艮櫓の建設は大幅にずれこむことは確実です。いまですら工期が大幅に遅れて市役所は大慌てですから、着工の見通しが立たないということになれば、艮櫓計画の見直しが不可避になるでしょう。そうした意味で、調査検討結果が出るまでパイル工事に着手しないと約束させたことは、見直しの流れを加速させる、たいへん大きな要素になると思います。
艮櫓の歴史的根拠についても、委員会では大問題になりました。市が根拠とする「肯山公木写之略図」や大広間の絵図がなぜ艮櫓設計の根拠になるのかと、ずさんすぎる検討に批判が相次いだのです。
西委員は、仙台城跡は国指定史跡にあたるほど重要な遺跡だが、まだ指定されていなからといって何をやってもよいと思っているのか、と痛烈でした。さすがに渡辺観光交流課長は、「何をやってもよいとは思っていない。慎重にやっていきたい」と答弁していました。慎重にやっていくということならとして、西委員はさらに、国指定史跡またはそれに準じる遺跡で復元をする場合のチェックポイントと説明され、これらを満たさないと絶対に復元とはいえないと強調しました。そのチェックポイントとは、@艮櫓遺構の発掘資料、A艮櫓の古写真、B艮櫓の設計図を含む文献史料の三点です。これは文化庁の示した、いわゆる復元三条件というもので、もし艮櫓を復元するのであれば、これらがないと許可にはならないと断言されました。もしどうしても建てたいのなら、これらの資料を発見するのが最低条件だと突きつけたわけです。とくに西委員が強調したのは、これらの条件は艮櫓のものでなければならず、大広間や巽櫓などの資料ではないという点です。当局は全国の他の天守閣や隅櫓などを参考に艮櫓の図面を引いていますが、こんなやり方はとんでもないということですね。そのうえで西委員は、根拠のないことを積み重ねるのは思いとどまるべきだと迫りました。
岡田委員もまた、前回の委員会で助役は国指定をめざすために調査をやるといったこと、そのための調査をすることがこの委員会の役割だと述べたことをあげながら、この委員会は指定のための条件を整える委員会ということなので、指定の阻害要因を排除することがこの委員会の役割だと、国指定の障害になる艮櫓の建設を断固として排除していく決意を表明されました。
鈴木委員も、市が根拠としている正保の城絵図の艮櫓の姿は、絵師の想像で書かれたもので、そのような絵空事を根拠にするのは、とても復元とはいえないと述べ、新しい建物を建てるのならその場に建ててはいけない、それを見た人はこれが歴史だと思うので、建てるのなら別な場所に建てないとウソをついていることになる、そのようなものがシンボルになるはずがない、と強烈に市の計画を批判しました。
最後に委員長が、陪席された宮城県教育委員会の方と文化庁の調査官に発言を求めました。
まず県教育委員会の方は、事前調査がパイル部分だけになっているのはなぜかと疑問を呈し、県としては史実と違うような扱いはこれまで認めておらず、県全体でみれば仙台市のやり方は普通ではないと、市のいい加減さに強い警告を発しました。
また、文化庁の磯村文化財調査官も、仙台城は保存すべき物件という認識をもっているとして、この委員会の意見を聞きながらそういう方向にもっていってほしいと、当局が艮櫓建設見直しを決断することに強い期待を表明しました。
<付録>
<委員長>先ほど(の文化財課の説明では)、艮櫓のパイル部分の調査については本委員会で評価検討したうえで着工すると理解したが、いまの(観光交流課の)説明では埋め戻しに間に合うように杭を打つということではないか。埋め戻しと杭打ちを同時並行でやるということか。
<観光交流課長>櫓の施工については、本委員会で調査範囲を決めて頂いて調査をし、問題がなければ杭の施工にはいる。石垣の積み戻しのスケジュールと合わせて施工することになっている。
<委員長>先ほどの文化財課の説明と違うではないか。今の説明では、杭の工事は一部にせよ始まるということではないか。
<観光交流課長>調査を終え許可を頂いてから基礎工事になる。
<委員長>こちらの調査検討が終わるまでは杭工事には一切手をつけないということか。
<観光交流課長>基本的にはそういうことだ。
<委員長>「基本的に」とはどういうことか。
<観光交流課長>評価を頂いたあとから杭の工事に入るということだ。
<委員長>埋め戻しに間に合うようにというのはどういうことか。
<観光交流課長>埋め戻しと同時並行的に杭を打つということだ。
<委員長>それでは調査の前にやるということではないか
<観光交流課長>そうではない。
<委員長>なぜ?
<観光交流課長>調査をして評価して頂いてから工事をやるということだ。
<委員長>埋め戻しは調査の前かあとか分からないではないか。
<観光交流課長>それは石垣の工事のスケジュールと調整しながら進めていくと…
<委員長>石垣の埋め戻しのスケジュールと調整するのではなくて、こちらの調査結果を待つのが基本ではないか。埋め戻し作業とこちらの調査結果の結論とは別問題ではないのか。
<観光交流課長>はい。
<委員長>それがなぜ埋め戻しに間に合うような杭の打ちかたを考えるのか。そこが分からない。
<岡田委員>石垣の修復に合わせて巽櫓の検討が終わるかどうかは分からない。
<文化財課長>観光交流課長の説明は艮櫓の建設スケジュールの流れだ。基礎の調査をクリアーしたうえで、建設工事に関しては石垣の修復工事と同時並行的にできるようになるという意味で説明した。調査は当然前提になる。調査結果をオーソライズして影響はないということが分かれば、今のようなスケジュールで進む。万が一、調査で新しいものが出てきたりすれば、そこでスケジュール調整はあり得る。理解頂きたい。
<委員長>埋め戻しにあわせて基礎工事をやるということではないということか。
<文化財課長>全部石垣を積み上げてから基礎の工事をやるという工法ではない。
<委員長>こちらの検討が半年かかるか1年かかるか、分からないが。
<文化財課長>それは今後の結果の調整なので、今時点で順調にいけばという、あくまで一つのスケジュールだ。
<委員長>そういうスケジュール案をここで堂々ということは、この委員会の調査結果とはかかわりなく工事を進めるつもりではないのか。
<文化財課長>そういうことは考えていない。
<委員長>それでは経済局としては、こちらが結論を出すまでは杭工事には着工しないと約束できるか。埋め戻しに間に合うようにとかということではなく。
<観光交流課長>結果がでるまで先に進めないということは石垣工事をストップすることになる。100%前に進めないとはいえない。
<委員長>艮櫓と石垣とどういう関係があるのか。評価が出るまで石垣工事はストップするということか。
<百年の杜部長>調査に1〜2年ということになれば石垣工事をストップするか、または石垣は積んでしまって、あとから改めて作っていくという選択になる。ただこの時点ではこちらにしますという想定はしていない。そういう場面になれば再度検討して、この委員会にも報告したい。
<委員長>いかなる工法をとるにしても、この委員会で結論をだすまでは杭打ちはしないと約束できるか。どんな小さな工事でもしないと約束できるか。それも約束できないとすると、本委員会で調査結果を検討しても意味はない。片方では工事が始まっているということではね。
(しばし、事務局が小声で話し合ったのち)
<観光交流課長>調査結果が出るまでは杭の工事はしない。
<委員長>約束できるか。
<観光交流課長>約束できる。
<委員長>いまの発言は議事録にちゃんと残すように。