第5回石垣委員会のウォッチング・リポートをお届けします。詳細なリポートを作成する時間をとれませんので、今回は最大のポイントだけを紹介しておきます。
浅田委員から艮櫓建設に疑問の意見
新谷委員長も艮櫓は「由々しき問題」と指摘
もっとも注目すべき点は、浅田秋江委員からだされた艮櫓と石垣の関係でした。伝統工法(の従来の石垣)では艮櫓も基礎杭もなかった、艮櫓を作るとなれば伝統工法を補強しなくてもよいのかどうか、市長は(建てることを)決めているということだが再確認したい、という発言です。浅田委員はさらに、伝統工法では300年もったが、櫓を建てて杭の振動が入ると、我々は(その影響が)まったく分からない、艮櫓を建てて(石垣が)もたないときは我々の委員会は何をやっとるんだということになる、別な委員会(艮櫓委員会)で基礎杭を入れるということになると文化財を守るということにはならない、その辺の一貫性はどうなっているのか、とも述べました。
これに呼応するかのように、新谷洋二委員長も、櫓が石垣の上に乗っかって基礎杭をやれば、由々しき問題になると私は思う、杭が振動によってどこまで影響するかを考えると、伝統工法ではなくなってしまう、そのあたりは市長には考えてほしい、と発言しました。
要するに、現在進めている伝統工法を尊重した石垣修復では、その上に艮櫓を建設することは無理だという意味です。浅田発言はさらに踏み込んで、艮櫓の基礎杭は文化財を守ることにはならないと明快に述べています。
もともと三期石垣の上に艮櫓はなかったのですが、それは櫓の加重が石垣に影響し、崩壊する危険を避けるためであったのかもしれません。しかし市当局は、土盛りをした不安定な三期石垣の角地に艮櫓を建設しようとしているのですから、土木系の委員としては、それは危ない、ということなのです。とうぜんの判断でしょう。
逆に、もし艮櫓を建てるのであれば、伝統工法をやめて頑強な現代工法で石垣構築をする必要がある、ということでもあります。しかし、すでにこの委員会では伝統工法を尊重して修復するということになっています。これを現代工法でやり直すということは、それこそ石垣の文化財としての価値を全面否定することになります。これまで積み上げてきた議論を、当委員会がいまさらひっくりかえすことなど考えられないことです。もちろん、当委員会がそのような逆転した方向をめざすようなことがあれば、世論も文化庁も黙視するはずがありません。
そのようなことを考えると、浅田委員や新谷委員長の発言は、艮櫓を建てることは、もはや無理だと言っていることになるでしょう。
こうした委員からの意見に対して、観光交流課長から、櫓の支持杭と石垣への影響については十分な解析をおこなっており、影響を及ぼさないという評価が出ているとの発言がありました。しかしこれに対して浅田委員は、解析は解析でしょ、と突き放していました。単なるシミュレーションでは、現実に発生する石垣への影響を予測できないということでしょう。
以上の議論から分かるように、石垣修復は単に石垣だけの問題ではなく、艮櫓の建設問題と密接不可分の関係にあります。新谷委員長を含めた土木系の委員から、いまの工法で艮櫓を建てることは問題だという発言が出たことは、市当局にとっては衝撃だったかもしれません。しかし、問題は、まさにそこにあります。
市当局は、こうした意見をいさぎよく受けとめ、艮櫓の建設問題を再考して頂きたいものです。