石垣工事の一時中止も!! 建設局長が発言
専門委員が工法を痛烈に批判
12日に開かれた石垣修復工事専門委員会の第2回会合で、専門委員から、「なぜ委員会に相談なしで工事が進んでいるのか」「いまの工事をそのまま続けるつもりなら、何のための委員会か」と厳しい批判が次々に出されました。その結果、加藤秀平建設局長は、「現場をどうするのだという委員の意見も含めて検討したい」と、工事の一時中止も含めた検討に入ることを約束しました。委員の方々の良識ある頑張りに、市当局も抗しきれなくなってきています。
土木工学の委員二人からも、三百年もった石垣を再評価する意見が出されたり、現工法はかえって危険だとする意見が出されるなど、公園課は窮地に立たされ始めました。まさしく紛糾した委員会でした。
◇あいつぐ工法への厳しい批判
議事は、前回委員会で北垣委員や鈴木委員から出されていた疑問と質問に公園課が回答することからはじまりました。現工法の正当性だけを主張する内容でしたので、北垣委員は「工事を進めておきながら、お前らの話を聞いてやるということか」と強く反発し、「かつて委員会がありながら、何の検討もせずにきたのは問題だ。なぜ工事を進める前に委員会で検討しなかったのか」ときびしく問いつめました。
さらに北垣委員は、基礎部分は80%も新補石材を使っている、通常の文化財修復工事でこれほどたくさんの新材を使っている所はない、文化財として将来的に問題になる、重みで不等沈下の心配がある等々、矢継ぎ早に問題点を指摘しました。
これに対して公園課は、80%ではなく14%だと反論しましたが、北垣委員は、そんな言い方はしないほうがいいと不快感をあらわし、それは全体の数字であり基礎部分は80%ではないか、こんなに沢山の新材を基礎部分に使うことは前の委員会でも知らされていない、と強く批判しました。
公園課は、なぜ新材は直方体なのかという質問に対して、OHPを使いながら、安定性を考慮して控えを長くした、控えの短い石のほうが割れやすい、などとの説明をしました。また、なぜ木端石(こっぱいし)を評価しないのかという質問に対しては、木端石はクッションの役割をはたさない、艫面(尻部)の木っ端石が空洞化しているなどと述べて、あまり木端石を入れるのはどうかと、否定的な見解を述べました。
これに対して鈴木委員は、公園課は階段状石列を評価せず、今度は木端石も評価しないが、なぜ役に立たないものを使って300年も石垣がもったのかと鋭く追及し、続けて、人を感動させるのは石垣の由緒だ、安全のためと称して現代技術で片っ端から由緒を切り捨てていけば、それはもはや文化財ではない、開府四百年の由緒を否定することだ、伝統技術は意味はないというのでは何のためにこんな会議をやっているのか、300年もったのは階段状石列と木端石の役割が大きいからだ、これを評価しないわけにはいかないと、強く主張しました。また、300年前の技術を我々は理解できないが現代技術に劣るものではない、土木の研究者は先人の技術を解明してほしいと期待を表明し、そうしないとこの事業で全てがパァーになると述べました。
誠にその通りです。長い長い歳月を耐えて生き続けてきたからこそ、私たちは感動するのです。だからこそ文化財として、より長く後世に伝えなければと思うのです。安全と称してこれを破壊することは、歴史を、そして先人の知恵を否定することです。
◇現代工学の専門家からも
柳沢委員の発言も、市当局には衝撃だったと思います。公園課の説明のなかにに、上下の石材の間に胴飼石を入れるというのはありましたが、これでは胴飼石に応力の集中が起きて石材に破断がおきる、かえってよくない、むしろ鈴木委員のいうように木端石のほうがよい、これは伝統工法の良い点だ、事務局の説明は力学的にみても間違っている、という批判が出されたのです。ただし、木端石だと変形が大きくなるのをどうするかという問題はあるとも指摘しました。
伝統工法を否定的にしか評価しない公園課に対して、現代工学の委員からも木端石の役割を高く評価する見解が示されたわけです。木端石にクッションの役割を担わせるためには、石材を四角錐形の形状にし、石材と石材の間に木端石をたくさん入れることが必要です。要するに直方体の石ではだめだということですね。安全性を錦の御旗にしてきたのですが、公園課のやり方はかえって危ないという指摘ですから、どうしようもありませんね。それに公園課の説明の仕方も問題ありです。専門家に対して、「中学校の教科書にものっていますが」と言いながら、力学の話をしていました。おやおやと思いながら聞いていましたが、それが間違った説明だったわけですから…。
◇旧委員会を解散させたツケ
北垣委員からは、問題はたくさんある、しかし工事はどんどん進められていく、委員会はこれをどうするのかと、現在進行中の工事を一時中断するべきだとの意味をこめた発言がありました。新谷委員長からも、旧委員会が途中で中断されたのが問題、よそでは継続してやっているという発言があり、旧委員会を市当局が一方的に解散させたことがこうした事態を生んだという認識を示されました。それはそうです。秘密裡に都合よくやろうとするからおかしくなったわけです。そのツケがまわってきたということでしょうね。
◇新谷委員長の立場
しかし新谷委員長は、初回の委員会とは異なって、かなり本音の発言もするようになってきました。過去に議論を戻せというのはどうか、どう調整するかが大事だ、伝統工法には欠陥もある、現代工法はその欠陥を消すことができる、震度5以上の所では現代工法でやらなければいけない、等々。
これを聞いて、宮城県沖地震のときも崩れずに耐えているんだぞと傍聴席で憤然としましたが、救われたのは浅田委員の発言でした。「委員長に反論するわけではないですが…」としながらも、「鈴木先生の言われるように300年も壊れなかったことに意味がある、この点を一生懸命考えなければいけない」。
まったくもってその通りです。その解明もできていないと委員長自身が発言しているのに、伝統工法は危ないという、決めつけの論理は成り立ちません。さすがに新谷委員長もまずいと思ったのか、「私も木端石はダメだと思っていたが、今は役に立っていると思う」とフォローしていましたが…。
最後に新谷委員長は、「科学的に解明できないことでも、伝統工法でよさそうだということは、現代工法でちょっと裏打ちしていくことでやりたい」、「学際的な研究というのは相手の立場に立ってやることだ」と述べていました。伝統工法派も現代工法派もお互い譲り合えということのようですが、単に妥協しあうということでは、これまた問題ありです。前回、浅田委員が指摘したように、「本来、伝統工法を守りながら安全性を確保するという考えでなければいけない」という立場から、文化財としての価値を損なわない、よりよい修復を目指して頂きたいと思います。
◇方針転換を迫られる市当局
委員からはもっとたくさんの厳しい意見が出されましたが、割愛します。しかし、現代工法重視の姿勢を強くみせ、強行突破をはかろうとした公園課に対して、今回の委員会では、五味委員を除いて、5委員が伝統工法を肯定する発言をしました。「伝統工法を守りながら」という点では、委員のなかの一致点が見えてきたようです。
こうした厳しい雰囲気が充満していましたので、閉会の挨拶に立った加藤建設局長は、「重要な部分での議論が必要だと思う。現場は動いているが、そのままで進むのはどうかという意見も出された。そういうことを含めて検討したい。ただ期限を切って議論をして頂きたいが、第1回と第2回の議論を聞くと、文化財として考えていくという方向が具体的に出てきたのかなと思う。我々としても無視しているわけではないが、そういう観点から一時、現場のペースダウンということも検討したい」と総括しました。
現工法の見直しを検討するという重大発言です。この委員会では、現工法が文化財としての価値を大きく損なうことがますます明白になりましたので、これを無視して現工法に固執するわけにはいかないということでしょう。単なるペースダウンということではなく、とうぜん工事の一時中断もありえるということを発言したものです。だからこそ、河北新報と読売新聞はいずれも、「工事の一時中止も」(河北新報)、「石垣修復工事、一時中断も」と大見出しで報道したのです。
現工法は問題あり、と委員の多くが指摘したわけですから、問題のある工事をそのまま続行することは、それこそ大問題です。積み直しを含めて、ちゃんとした結論が出るまで一時凍結するのは当然ですね。
以前指摘しましたように、市当局は新たに設置された専門委員会を骨抜きにして、形だけの委員会にするつもりだったのですが、逆に委員の方々のご見識により、なんとも「骨太の」委員会になってきました。大いに喜ばしいことです。
文化財としての価値をどうやって守るか、禍根を残さないように、委員の方々には叡智を絞って頂きたいと、切に期待するものです。
なお次回の石垣委員会は、8月10日(金)午後1時からです。ぜひ多くの方々に傍聴に参加して頂きたいと思います。まれにみる面白い委員会ですよ。