非礼とは存じますが、新委員会の発足にあたり、仙台市民として、また歴史研究に従事する者として、貴委員会にこうした文書を提出しますことをお許しください。
この文書では、石垣修復工事に取り組む仙台市当局の問題点を指摘し、あわせて貴委員会にいくつかの要望をさせて頂きたく存じます。よろしく、ご高配のほどを、お願い申し上げます。
一 石垣修復工事専門委員会には何の権限も与えられていません
私たちは、藤井市長に提出した去る二月八日の要望書で、昨年八月に解散された仙台城跡石垣修復等調査検討委員会(以下、旧委員会と略称)を再設置することを強く求めました。また昨年来、県内の歴史・考古研究七団体のみならず、全国の文化財・歴史学会・考古学会等からも、旧委員会の再設置や、一期・二期石垣の完全保存、伝統工法による三期石垣の修復等を強く求める要望書が再三にわたり提出されてきました(参考資料)。
石垣修復工事が進行中にもかかわらず、仙台市が旧委員会を解散したこと自体が大変異常なことでした。その後は特定の旧委員から個別指導をうけているとのことでしたが、こうした不透明なやり方に対して、各学会だけではなく、市民からも強い批判が次々に出されてきたわけです。今回、市当局が委員会を再設置せざるを得なくなったのは、こうした声に押されたからだと受けとめています。
本来ならば、委員会の再設置を歓迎すべきところですが、それができないことは極めて残念なことです。新委員会には以下のような極めて重大な問題があるからです。
まず、新委員会には、何らの権限も与えられていないのではないかという問題があります。旧委員会は、石垣の発掘調査・修復工事と艮櫓の復元問題に関し「調査審議する」となっていて、かなり強い権限が付託されていました。しかし、新たに設置された仙台城石垣修復工事専門委員会は、「指導及び助言」をするだけとなっています。
この点について 公園課に、もし委員会でこれまでの工法等について異論が出たらどうするのかと尋ねたところ、意見を採用するかどうかは行政側が判断すると明言していました。要するに、ご意見は伺いますが、最終判断権は行政側にあるということです。委員会には何の権限も付与されておらず、完全に骨抜きにされていると言わざるを得ません。
市民や学会から密室行政だとの批判を受けて委員会を再設置したのですが、その実態はこのようなものだったのです。これでは、ご意見は承りましたという形をみせるだけの委員会であり、委員や市民を愚弄するものにほかなりません。
また、委員の構成にも問題があります。旧委員会には歴史学(文献史学)の専門家が入っていましたが、委員名が公表された石垣修復工事専門委員会と艮櫓復元専門委員会には入っていません。今後、人選の予定とされている仙台城跡調査指導委員会には歴史学関係者を委員に任命する可能性がありますが、この委員会は現在工事が進行中の石垣工事や艮櫓に関与しないと聞いています。
旧委員会では、石垣や艮櫓の問題について歴史学の立場から専門家が関与し発言していました。史実を確定し、より適切な文化財行政を遂行するためには、文化財・土木工学等と並んで歴史学の専門家が不可欠です。にもかかわらず、なぜ歴史学の専門家は排除されているのでしょうか。旧委員会を三委員会に分解して歴史学関係者を石垣と艮櫓委員会から排除する市当局のやり方は極めて巧妙ですが、行政の都合を優先させるための委員会構成だと言わざるを得ません。
このように、新たに設置された貴委員会は、市当局からは何の権限も与えられていないに等しいものとなっております。市当局が現在進行させている工法を追認させるだけの機関として利用するのではないかと、私たちは強く危惧しています。
つきましては、委員から指摘された問題点は謙虚に受けとめて尊重し、石垣修復工事にに適切に反映させるよう、貴委員会の総意として市当局に強く要請されることをお願い申し上げます。また、これからでも遅くはありませんので、石垣と艮櫓の両委員会に歴史学の専門家を加えるよう要請されることをお願い申し上げます。
二 旧委員会は一方的に解散させられました
昨年八月に旧委員会を解散させた理由について、市当局はこれまで、三年の任期が来たためと説明していますが、私たちが情報開示によって得た資料等によれば、これを正当な理由とみなすことはできません。
平成九年八月二九日の第一回委員会で配布された「仙台城跡石垣修復等調査検討委員会設置要綱」第三条第三項によれば、確かに「委員の任期は、三年とする」とされています。しかし同四項には、「委員は、再任されることができる」とあります。つまり市当局自身が、委員の再任を予定していたことが明らかです。それはこの第一回委員会で示された工事日程が、平成八年度から平成一三年度までの六年間となっていることと関係していると理解できます(委員会配布資料「仙台城石垣修復工事概要」)。市当局は当初、同委員会を工事期間と同じ六年間存続させる予定だったのです。
また、同委員会の設置目的からみても、委員会の解散には問題があります。「設置要綱」第2条には、同委員会の役割について次のように記しています。
第2条 検討委員会は、次に掲げる事項を調査審議する。
(1) 石垣の解体修復にともなう構造等の解明に関すること
(2) 石垣の修復に伴う発掘調査に関すること
(3) 艮櫓の復元に向けた調査に関すること
(4) その他石垣及び本丸の諸施設の構造等を明らかにするために必要な事項
こうした内容からみて、同委員会は少なくとも石垣修復工事の完成まで存続し、石垣や艮櫓の問題について調査検討する役割を負っていたと理解できます。平成一〇年工事請負契約段階の仕様書の新補石材の項目には、「但し大きさ、高さなどは検討委員会の調査により変更する場合があるので、加工などは調査結果後とする」と記されています。つまりこの規定は、修復工事期間中における検討委員会の存在を前提としたものにほかなりません。にもかかわらず委員会を解散させたことは、極めて不可解であるだけではなく、市当局自身がこうした規定に反する行為を行ったものと言わざる得ません。
委員会では、伝統工法や艮櫓の問題をめぐって意見が対立していましたので、市当局の方針に反する結論が出ることや、議論の長期化によって工期が遅れることを恐れて解散させたのではないかとの強い疑いがあります。これでは、公的に設置された委員会をないがしろにした行為だと言わざるを得ませんし、健全な文化財行政が行われているとは到底言えるものではありません。。
また市当局の説明によると、旧委員会の解散後、伝統工法に詳しい元委員の一人から指導を受けているとのことでした。しかし旧委員会には、ほかにも伝統工法に詳しい委員が少なくとも二人いました。なぜこれらの元委員に意見を聞かないのかと尋ねても、「理由は勘弁してほしい」ということで明らかにされていません。委員会を解散したうえで、特定の元委員からのみ個別指導を受けるというのは、極めて不透明なやり方です。委員会でオープンに議論され承認を得てこそ、修復工事に市民や文化財関係者の信頼を得ることができるのではないでしょうか。
仙台市当局は、旧委員会に対して、このような対応をしてきました。前述しましたように、新たに設置された貴委員会に、「指導及び助言」以外の何の権限も与えていないのは、市当局の根本姿勢が何ら変わっていないことを示しています。貴委員会におかれては、この点を留意され、市当局に対して、文化財保護を最重視する観点から強く指導・助言されることを心より願っております。
三 当初の理想的な修復理念は大きく後退しています
仙台城石垣修復工事は平成一〇年三月に、鹿島建設をメインとするJVとの間で請負契約が結ばれましたが、そこで仙台市当局が請負業者に示した仕様書(以下、原仕様書と称す)には、石垣修復工事について、私たちがみても感心するほど立派な内容が次のように記されていました。
・「修復にあたっては、初代藩主伊達政宗が約四百年前に築いた往事の技術を後世に 伝承することを基本とするため、本市教育委員会文化財課が行う発掘調査と並行し て工事を行い、本市が別途設置した「仙台城跡石垣等修復調査検討委員会」により 石垣の構造や構築技術の解明を図り、それらの調査を基に、往事の工法を再現し、 文化財としての価値を損なわないように修復することとしている。」(『特記仕様書 石垣修復編』「目的」の項目)
・「なお、本工事は江戸期におけるこの地域の特徴的な技術を再現することにあり、 往事の石積や石工技術の継承や伝達も目的としていることから、請負業者は石工職 人についても市内や周辺地域の同職人に呼びかけ、参加させることにより、同技術 者の育成や高揚を図ることとする。」(同前、「石積工」の項目)
この文章をみる限り、仙台市当局は当初、石垣修復にあたって、往事の工法の解明と再現、さらに地元の石工職人による石積技術の伝承等、文化財としての価値を守るために最大限の配慮と慎重さをもって臨もうとしていたことが伺えます。地元に存在する貴重な文化財を後世に久しく残していくための姿勢としては、高く評価されるべき内容でした。
このような方針を堅持して石垣修復工事を進めていれば、おそらく問題はなかったと思われます。しかし、旧委員会の議事録によれば、最終回となった第九回検討委員会において、委員のなかから、市当局が進める工法に関して、「これは明らかに現代工法ででき上がっている」(第九回議事録七頁)、あるいは「これは我々が言っておった伝統技術を無視した考え方に近いんだと思います」(同前八頁)などと、厳しい批判が出されていました。「往事の工法を再現」するという当初の理念からは大きく後退し、専門家からも批判されるような内容になっていったことが分かります。
私たちは、市当局自身が策定したこの素晴らしい仕様書に基づいて、仙台城石垣修復に臨むべきだと考えております。貴委員会におかれても、この仕様書に基づいて、仙台市当局に勧告や強い指導助言をして頂けますよう、心から期待しております。
三 新補石材の形状について
私たちは二月八日の要望書で、破損した石と交換される新補石材について、異常に長い直方体のまま積み上げられている点を問題にし、名実ともに「伝統工法」による石垣の修復を行うことを求めました。また、このような新補石材を用いる根拠や、新補石材について旧委員会が示した見解を確認するために、委員会の議事録や配布資料等を確認すると共に公園課からのヒアリングを行いました。その結果、驚くべきことに、新補石材の形状は旧委員会の了解を得ないまま変更され、工事を進めていることが判明しました。
(一) 形状変更は検討委員会に諮られるべき事項でした
「往事の工法を再現し、文化財としての価値を損なわないように修復する」という、平成一〇年請負契約時の原仕様書に明記された修復方針に基づけば、新補石材も旧材と同規模・同形状にすることが求められます。これらの変更は文化財修復方針の根幹にかかわる問題であり、とうぜん委員会に諮られて然るべき事項です。先の原仕様書にも、新補石材について、「但し大きさ、高さなどは検討委員会の調査により変更する場合があるので、加工などは調査結果後とする」と記されています。新補石材の形状の変更は、委員会の調査検討を経たうえで行うことになっていたことが分かります。
新補石材の形状の変更は、単に石材の大きさだけの問題ではなく、石と石との間に挟みこんでクッションの役割をはたした木っ端石の量や役割を変更させることにもなります。従来の三期石垣は、四角錐形の石材を大量の木っ端石で包み込んで衝撃を柔らかく受け止める点に大きな特徴がありました。これが、その後の地震にも耐えて三百年以上も石垣が崩れなかった理由だと、旧委員会では指摘されています(第八回委員会議事録)。
しかし新補石材は、旧材の四角錐形とは異なってほぼ直方体に近いため、上下左右の石材との接触面が広く、木っ端石の量が極端に少なくなっています。こうした新補材を多用すると、木っ端石がもつクッションの役割は大きく低下することになります。それだけではなく、三期石垣に体現されていた「往事の工法」=伝統工法は大きく姿を変え、その価値を損なうことになります。
「往事の工法」はこのような特徴をもっており、そこに三期石垣の文化財としての大きな価値がありました。したがって、「往事の工法」を本質的に損なう新補石材の形状変更については、とうぜん委員会の審議・了解を得てなされるべきものであったことが明らかです。
(二) 形状変更は検討委員会の了解を得ていませんでした
ところが、以下の経緯をみると、この形状変更については、旧委員会に諮られることもなく、請負業者との間だけで進められていたことが分かります。
平成一〇年三月の原仕様書には、購入される新補石材の寸法に関する記事があります。事例としてあげられた中間サイズ(b)をみると、「面」(表面)は六〇p×六〇p、「控え」(奥行)は七〇〜九〇pでした。石材の上端は尻部で一〇〜一五pを削り込み、下端の尻部も五〜一〇pを削り込む仕様になっていますので、旧材の四角錐形に近い形状だったといえます。
しかし、平成一二年四月に行われた第二回変更契約では購入石材の大きさに変更が加えられ、同じ中間サイズ(b)の「面」は九〇p×九〇p、「控え」(奥行)は一二〇〜一九〇pとなっています。また上端尻部の削り込みは、「表面の五〜一〇%」に変更されています。これは四・五〜九pにあたり、原仕様書の削り込みを大幅に削減しています。下端尻部の削り込みは削除されて、完全な平面形となっています。「面」の面積は二・二五倍、「控え」はほぼ二倍の長さにまで拡大され、尻部の削り込みも大幅に削減していますので、石材の形状は直方体に限りなく近づいているといえます。
第二回変更契約における、こうした購入石材寸法の変更は、とうぜん実際に積み上げる新補石材の形状変更を前提にしたものだと考えられます。第三回の検討委員会において、初めて新補石材の説明がなされていますが、そこではこの変更契約後の数値が報告されています。しかし、原仕様書の数値や、石材の大規模化、尻部の削り込みの削減等は報告されていませんので、委員が石材の形状に変更があったと気が付くことは困難だったと思われます。また、購入石材だけではなく、実際に積み上げる新補石材を旧石材とは異なった形状とすることについて、委員会での説明はまったくなされておりません。
第二回変更契約がなされた時期は、旧委員会が存続した時期にあたります。前述のように、石材の大きさは「往事の工法を再現する」という目的の根幹に関わる問題であり、その変更にあたっては、とうぜん委員会に諮るべき事項です。にもかかわらず、委員会の了解も得ずに購入石材や積み石の形状が変更され、巨大な新補石材による積み上げ工事が行われてきているのです。
市当局は、安全性を重視して旧材よりも大きな新補石材を用いたと説明しています。そうであればなおさら、委員会に報告して当否を確認し、その了解を得る必要があったはずです。委員会が存在していたにもかかわらず、購入石材の形状について請負業者との間で内密に変更契約を行っていたことは、同委員会を軽視した行為だと言わざるを得ません。
以上のように、現在進行中の直方体の新補石材による修復工法については、旧委員会の「調査審議」を得ずに行われているものであり、旧委員会の設置要綱に反した不当な工事だと言えます。私たちは伝統工法を否定する現工法を決して容認することはできませんが、少なくとも再設置された新委員会において現工法の妥当性等が検討され、その結論を得るまで、現在進行中の工事を直ちに中止するよう、貴委員会において市当局に勧告されることをお願い申し上げます。
(三) 新補石材の問題点
仙台市当局は、新補石材の尻部をわずかに削っただけの直方体としたことについて、大きな石材のほうが強度があること、上下に隣接する石材との接触面が大きくなり衝撃を広く受けとめて力を下方に分散できること、等と説明しています。形状が大きくなれば単一石材の強度が高くなるのは当然かもしれません。また全ての新旧石材が直方体であれば、こうした説明にも一定度の合理性があるかもしれません。しかし、新たに挿入される新補石材は部分的ですので、必ずしも石垣全体の強度が増大するとは考えられません。むしろ逆に、以下のように石垣の安定性を損なうのではないかと私たちは危惧しております。
@ 市当局の説明によれば、四段目までの石材のうち六割は、形状の大きな新補石材に交換されるとのことです。現場を見ると、これらは古い石材のなかに入り交じりで配置されています。形状の異なる旧石材と新補石材が混在するのですから、石垣全体の力関係が不安定になることは容易に推定できます。
A 市当局は、平面部の広い新材を密着して置くと、相互の面で支え合って石が前面に飛び出すことはないと説明しています。石垣の全てが新材であればこうしたことも考えられますが、形状の異なる旧材と新材を混在させた場合、小さな旧材に上下左右からの力が集中し、旧材が破損したり飛び出してくる可能性が考えられます。
B 新補石材は旧材に比べて平面が広くなっていますが、表面には小さいながらもオウトツ(凹凸)があります。新材と新材を密着して上下に配置した場合、そのオウトツ部分に力が働き、石材が破損する可能性が考えられます。
C 旧来の伝統工法では、石材は尻にいくほど細くなり、そのため石と石の間に大量の木っ端石を挿入してクッションの役割を担わせていました。伝統工法において、わざわざ手間のかかる四角錐形にしたのは、石と石との接触面を減らして木っ端石の充填量を増やし、石垣全体の柔構造の度合いを高めるためであったと考えられます。しかし新材は直方体に近いため、充填する木っ端石はごく少量にすぎず、クッションの役割は期待できません。しかも、少量の木っ端石が平面体の新材の間に挟みこまれた場合、その木っ端石には柔軟性がないため、新材と木っ端石の接触点に重力がかかり新材に破断が発生する可能性が考えられます。
D 修復工事では新補石材を上下左右に重ねた部分が多く見られます。これですと平面状の石材が直に重なりあうことになりますので、上下左右からの荷重・衝撃は新補石材にストレートにかかり、背後からの土圧も加わりますので、押さえのない前面に新補石材が飛び出したり、石割れの可能性がより高くなることが考えられます。
E 市当局は、新材と旧材が上下に隣接した場合、長い新材の尻部に飼盤石をあてがって上からの重力を受けとめると説明してます。しかし旧材の後部と飼盤石の間には、わずかとはいえ空間が生まれるため、上からの圧力にひずみが生じて新材に破断が発生する可能性が考えられます。
「往事の工法」=伝統工法は柔構造によって耐震性を保ってきたと考えられますが、現在行われている新工法は剛構造に転換したということができます。しかし以上の点を考慮すると、伝統工法より新工法が安全性に優れていると断言することはできないのではないかと私たちは考えております。右にあげたような可能性について、貴委員会はどのような見解をお持ちでしょうか。ぜひとも、私たちや市民に対して、貴委員会の見解を公表されるよう、お願い申し上げます。
四 再度の地中レーダー計測が必要です
昨年7月に東北大学東北アジア研究センターの佐藤源之教授が、仙台市から依頼を受けて、修復工事現場において地中レーダ計測を行い、左記のような結果をホームページで公表しています(http://magnet.cneas.tohoku.ac.jp/satolab/satolab-j.html)。
◎地中レーダ計測からわかったこと
・深度一m付近に反射を起こす物体を見出した。
・〇・五〜一m程度の大きさで数個見られる。
・物体が何であるかは判別できない。
・これまでの経験では大きめの石である可能性がある。
・ただし、レーダ特有の虚像を考慮する必要がある。
・より精密なレーダ調査により、より確度を向上させられる。
これによれば、現在確認されている一期石垣の上部の壁面内部に、「大きめの石」が存在する可能性が指摘されています。これは、まだ未発掘の一期石垣が存在している可能性を示しています。佐藤教授は、「より精密なレーダ調査により、より確度を向上させられる」と指摘していますので、一期石垣の存否の確認を含めて、さらに精度の高いレーダ計測が行われる必要があります。佐藤教授も要請されれば応じると明言しておられます。
しかし、担当部局に再調査の有無を確認したところ、一期石垣が存在する可能性は低いので調査は予定していないとのことでした。これは調査者である佐藤教授の指摘を無視した見解だと言わざるを得ません。あたかも、これ以上、一期石垣の遺構が発見されることを恐れているかのようです。
伊達政宗が築造した一期石垣の全体構造をより確実に把握できるチャンスであるにもかかわらず、市当局がこうした消極的な姿勢を取っていることは、極めて不可解なことです。貴委員会は石垣の問題を管掌する委員会でありますので、文化財行政の健全な姿を全国に示すためにも、地中レーダ計測を実施するよう、市当局に勧告されることを、心よりお願い申し上げます。
五 要望
以上、旧委員会以来の経緯や石垣修復工事・石垣保存問題に関する市当局の姿勢について、僭越ながら説明と要望をさせて頂きました。第一回委員会を開催された直後に、このような文書を貴委員会に提出する非礼を、なにとぞご海容ください。
私たちは、仙台城本丸跡から新たに発見された一期石垣や二期石垣が完全な姿で保存され、仙台市民の宝となることを心より願っております。また三期石垣も、解体調査で明らかにされたような伝統工法で修復されることを強く期待しております。仙台市の文化財行政の見識を示すものとして全国に誇りうるものであってほしいからです。
しかし残念ながら、一期石垣の背面遺構は一部とはいえ、新築が予定されている艮櫓の支柱(六本のパイル)によって破壊されることが判明しています。また三期石垣の修復も、伝統工法を否定する工法によって実施されています。内部遺構も不完全な復元がなされようとしています。伊達政宗や多くの石工職人など、偉大な先人たちの残した文化遺産が、仙台開府四百年の記念すべき年に大きく損なわれようとしているのです。このような事態を断じて容認することはできません。
このような思いを、ぜひとも貴委員会の委員の方々にご理解頂きたく、非礼を顧みず、この文書を提出させて頂いた次第です。つきましては、この文書に対するご見解を次回委員会のときにご検討下さり、ご回答をお寄せ頂けますよう、心よりお願い申し上げます。
以上
二〇〇一年六月二二日
仙台城の石垣を守る会
代表世話人 平川 新(東北大学教授)
世話人 大藤 修(東北大学教授)
同 菊池勇夫(宮城学院女子大学教授)
同 菊池慶子(聖和学園短期大学助教授)
同 鯨井千佐登(宮城工業高等専門学校教授)
同 今野 眞(仙台電波高等専門学校教授)
同 斎藤善之(東北学院大学助教授)
同 ジョン・F・モリス(宮城学院女子大学教授)
同 高橋美貴(東北大学助教授)
同 千葉正樹(東北大学助手)
同 柳原敏昭(東北大学助教授)
仙台城石垣修復工事専門委員会
委員長 新谷洋二様
委員各位