第1回 仙台城跡調査指導委員会ウォッチング(01年10月17日)

               平川 新

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 艮櫓の規模に疑問続出
  櫓の間尺や規模の根拠を示せ
 艮櫓委員会に学問的視点からの検討を要望

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 本日発足した仙台城跡調査指導委員会は、初回とはいえ、のっけから本質的な議論が展開され、市当局にとっては大変な委員会となりました。艮櫓新築の見直しは不可避となりそうな気配が濃厚です。

 会合では最初に加藤助役から挨拶があり、艮櫓問題ではこれまで議論があり昨年の市長決定があったが、国史跡指定をめざすためにも重要な調査となるので忌憚のない指導と助言を頂きたいと述べました。その助役の期待通り、まことに忌憚のない意見が、次々に出されることになったのです。

委員長に斎藤鋭雄氏、副委員長は岡田清一氏

 委員長に齋藤鋭雄委員、副委員長に岡田清一委員が選任され、斎藤委員長は、仙台城本丸で数々の新しい発見があった、学術的観点から調査を進めていきたい、すべてはこれから出発するので知恵を絞ってよい方向にもっていきたいと、抱負を述べました。

巽櫓の遺構調査を早急に

 議事の(1)会議の運営方法、(2)これまでの経過、(3)仙台城跡発掘調査の成果は省略します。(4)調査計画では、文化財課の田中主幹より、仙台城の全体像を解明し国指定史跡をめざすとの表明があり、第1期(五カ年)では市有地を中心に調査を行い、平成13年度は本丸の大広間・能舞台跡付近の遺構、清水門付近の石垣現況調査を行い、14年度以降は、巽櫓跡、懸造跡、御守殿跡、御成門跡などの遺構調査や仙台城全域の石垣現況調査を予定しているとの説明がありました。
 これに対して鈴木啓委員から、巽櫓と艮櫓の比較検討が必要なので巽櫓の調査は早めたほうがよいとの意見があり、西和夫委員も、艮櫓の設計には柱間の確認が重要であり、巽櫓から重要な示唆が得られるだろうとの発言がありました。

 遺構が全く存在しない艮櫓と違って、巽櫓は比較的良好な形で残っています。両櫓が描かれた唯一の資料である正保の城絵図では、艮櫓と巽櫓はほぼ同規模で書かれていますので、艮櫓の設計にあたっては当然、巽櫓の発掘成果を参照すべきものですが、艮櫓委員会では、巽櫓遺構の確認もしないまま設計を進めています。学問的手続きをまったく行わないで艮櫓を新築しようとしているのですから、そのいい加減さにはあきれてしまいますが、鈴木・西両委員からの指摘は、やんわりとこの点を指摘したものだといえます。

艮櫓の間尺の根拠はなにか? 
 艮櫓委員会のズサンさに厳しい質問が続出 

 しかし、これをきっかけに艮櫓の新築計画に議論は大きく踏み込んでいくことになりました。特に西委員の次の質問は、市当局にとっては驚天動地の問いかけとなりました。重要な議論ですので再現しておきます。

 <西委員>(艮櫓の)実施設計を進めているというが、1間は何尺で計算しているのか。
 <観光交流課長>6尺5寸だ。
 <西委員>先ほど(説明のあった本丸平場遺構)の発掘成果では6尺5寸か6尺3寸かは固まっていない。その点は配慮しているのか。
 <営繕課職員>大手門や大広間の図面では6尺5寸になっている。
 <西委員>大手門と艮櫓は時代は同じだと考えているのか。
<営繕課係長>はい。
 <西委員>それは矛盾しないのか。
 <営繕課係長>同じ慶長の時期だと判断している。
 <齋藤委員長>大手門の慶長説は絶対ではない。文献史学では二の丸建設期の寛永期ということも想定している。艮櫓の建設時期の間尺は6尺5寸か6尺3寸のどちらを使っていたのか、まだ分からない。自信をもって(6尺5寸で)間違いないといえるのか。
 <観光交流課長>正確には答えられないが、実施設計では6尺5寸でやっている。
 <齋藤委員長>発掘成果でも(建物には)複数の間尺が出ている。いつの時点の建物かを確定するまで、艮櫓の規模の確定はできないのではないか。艮櫓は宇和島城と同規模だというが、そんなに大きな櫓があったのか、疑念がある。艮櫓委員会には純粋に学術的な調査の結果にもとづいたことを基礎として検討してほしい。この委員会としてはそのような要望をしたいがどうか。
 <委員全員>それでよい。
 <齋藤委員長>市は復元・復興という言葉を使っているのだから、それにふさわしい、きちんとしたデータをそろえて進めて頂きたい。それを要望したい。
 <次長>それぞれの専門の方々で検討している。当委員会の議論を伝えたい。
 <西委員>艮櫓の(基礎部の)六本の柱(杭)の位置は建物の位置で決まる。この柱位置を調査する必要があるということだが、建物は別の委員会だからということではなく、ここを調査すること自体がどうかということはこの委員会で決めればよい。復元するかしないかの議論はすべきではないということだが、どこを掘るかは石垣に関わる。
 <文化財課長>ウワモノの大きさと基礎の大きさの変更はないと聞いている。基礎部の調査についてはこの位置でやる予定。櫓を作る作らないの議論は、この委員会の議論をはずれてしまう。
 <齋藤委員長>櫓を作る以上、基礎は調査しなければならない。調査とその結果の評価はこの委員会の責任だ。基礎は変わらないというが、6尺5寸と6尺3寸とでは建物の大きさが変わってくる。それに伴って杭の位置も変わってくるのではないか。ウワモノの遺構がきちんと確認でき、これなら間違いないというデータに基づいてウワモノが設計されて、大きさや基礎の位置が出てくる。それによっては杭の場所が変わってくる可能性がある。杭打ちに伴う調査はしなければならないが、本当にこの位置になるのかどうかをもう一度検討して頂いてから調査をしたらどうか。
 <次長>今は図面の位置なるだろうと想定している。仮に位置が変われば調査の変更はありえる。
 <西委員>艮櫓の大きさが変われば加重が変わる。そうすれば杭の太さも変わる。この位置で調査をやる意味がなくなるということだ。
 <次長>今後検討していきたい。
 <齋藤委員長>きょうの櫓についての意見を艮櫓委員会に伝えたい。純粋に学問的視点から検討をして、(艮櫓は)あわてないでやっていただきたい。6尺5寸も議論の対象になる。
 <岡田委員>艮櫓は6間半×6間となっているようだが、その根拠を知りたい。艮櫓委員会で議論された資料をみせてほしい。
 <文化財課長>経済局と確認・調整したい。
 <齋藤委員長>艮櫓委員会の議事録を見せてほしい。
 <文化財課長>そうしたい。
 <鈴木委員>杭の位置が石垣の前の委員会(昨年八月に解散された旧委員会のこと)のときと変わっているようだが、設計を変えたのか。
 <観光交流課長>その後の調査をふまえて位置を変えている。杭の長さも変更した。櫓を支えるために工夫したので図面は変わっている。
 <齋藤委員長> 杭の位置は杭の幅の半分くらい動いているが、長さは長くなっている。上に乗るのは同じなのに、なぜこういう図面になっているのか。
 <観光交流課長>1期石垣をよけるために杭をずらした。櫓の位置は変わらないが、左側に加重がかかってくるので、右側の杭が抜けるのを防ぐために長くした。
 <齋藤委員長>たったこれだけ動かすのに、こんなに修正が必要なのか。

 ここで他の委員から別な話題が出されましたので、残念ながら艮櫓の問題は、ここで切られてしまいました。とはいえ、なかなか大変な意見が出されたことはお分かり頂けると思います。

間尺によって艮櫓の規模が変わる

 以上の議論のなかに出てくる6尺5寸か6尺3寸かというのは、1間の長さのことです。現在でも京間と関東間(江戸間)で畳の大きさが異なるように、1間の長さも時期と地域によって異なっていました。尺もまた鯨尺や享保尺、曲尺などがあり、1尺を1mの33分の10に統一したのは明治以降のことでした。歴史的に実在した艮櫓がどういう間尺で建築されてたのか、じつは分かっていないのです。
 仮に1尺を33cmとし、1間を6尺5寸とすれば214.5cm、また6尺3寸とすれば207.9cmとなります。市の艮櫓の設計図では6.5×6.0間となっていますが、1間を6尺5寸とすれば6.5間は13.94m、6尺3寸とすれば13.51mということになります。1辺の長さで43cmの違いが出てきます。これを面積に換算すると、1間を6尺5寸とした場合と6尺3寸の場合とでは、約10.8uの違いが出てきます。これはあくまで仮の計算ですので正確ではありませんが、いずれにしても間尺の基準値をどう設定するかによって、艮櫓の平面規模はこんなに異なってくるのです。だからこそ、1間を何尺とするかは、大問題なのです。
 しかも、市の設計図で艮櫓を6.5×6.0間とすることも確たる根拠はありません。だからこそ岡田委員は、その根拠を示すように求めたのでしょう。艮櫓と同規模の巽櫓は、その遺構から1辺が9mから10m弱と推定されています。市の設計図では13.94m×12.87mになっていますから、いかに巨大化させようとしているのか一目瞭然です。
 艮櫓の平面を6.5×6.0間とするのも根拠あやふや、1間を6尺5寸とするのも根拠なし、という実態が以上の議論で明らかになりました。巽櫓の発掘を優先するようにという鈴木・西委員の意見や、はっきりした間尺が分かるまで艮櫓の規模の確定はできない、という齋藤委員長の指摘はとうぜんのことです。
 私たちはこれまで、市の設計図が示す艮櫓の規模も形状も歴史的根拠なしと指摘してきましたが、本委員会の委員の方々も、そのような疑問をお持ちになっておられるのです。 
 この問題は、本委員会の総意として艮櫓委員会に伝えられ、間尺や規模について、艮櫓委員会は明確な根拠を示さなければならないことになりました。公的な委員会による公的な質問ですから、艮櫓委員会はこれを無視することはできません。どのような根拠を出してくるのでしょうか。興味深いところです。
 もしいい加減な回答であれば、この問題は以後も尾を引くことになるでしょう。納得できる根拠を示すことができなければ、上記の議論の経緯からみて、根拠のない艮櫓を建ててよいのかということになるでしょう。加藤助役も述べていたように、本委員会は学術的見地からの検討を本旨としますので、学術的根拠のない設計図はとうてい認められないということになると思います。

一期石垣遺構もさらに調査を

 上記でもう一つ問題になったのは、艮櫓の基礎部である杭の部分の発掘調査のことです。市は現在計画している杭の場所を調査すればよいと考えているようですが、もし間尺が変われば艮櫓の大きさも変わります。そうすれば杭の大きさも長さも位置も変わらざるを得ません。ならば、今の設計図をもとに調査しても意味はないではないか、ということになるのです。これもまた当然の指摘でしょう。
 とはいえ、専門家によるレーダ探査によって、現在発掘された一期石垣以外にも石垣遺構が存在する可能性が高いと指摘されています。したがって今回の学術調査では、杭の位置の部分だけではなく、可能性のある部分全体を十分に調査し、一期石垣遺構の全体像をぜひとも確認して頂きたいと思います。

国指定をめざして調査機関の設置を

 なお、千田喜博委員から、仙台城跡の調査体制について、肥前名護屋城や金沢城では本格的な調査機関を作っている、仙台城も金沢城に遜色のない全国有数の城郭なので、国指定をめざすためにもちゃんとした調査機関を作ってほしいとの要望が出されました。これを受けた斎藤委員長は、それはこの委員会全体の希望だと述べました。
 また西委員からは、国指定史跡をめざすためにも調査は強力に進めなければならないとの発言がありました。私たちも国指定が受けられるような条件整備をぜひ強力に進めて頂きたいと切望するものです。西委員からはさらに、石垣と艮櫓と仙台城跡調査の三委員会はバラバラで進められているが、同じ仙台城の問題なので三委員長で連絡協議機関を作ってほしいという提案もありました。

巽櫓の遺構破壊も市の計画に

 今日の挨拶では助役も国指定をめざすと言っていますが、根拠のない艮櫓を新築して本丸跡の歴史的空間を変造し、政宗の一期石垣遺構を破壊することが、すでに明らかになっています。問題はそれだけではなく、市の青葉山公園整備事業では、巽櫓の遺構のある場所に約40人乗りという巨大なエレベータを設置することになっているようです。市当局は巽櫓の遺構も破壊するつもりなのです。国指定をめざすということは貴重な文化財を保存してこそ可能なことです。こうした破壊行為を繰り返す計画を立てておきながら、国指定をめざすなどと言えるのでしょうか。本気で国指定をめざすのであれば、直ちに艮櫓の新築計画を撤回し、巨大なエレベータを設置するなどという馬鹿げた公園整備事業も根本的に見直す必要があるでしょう。そうでないと、市当局は、単なるおためごかしで国指定をめざすと言っていることになります。しかし国指定をめざすと市の幹部が公言しているのですから、この帳尻はきっちりと合わせて頂く必要があります。市民をなめてはいけません。

市民が真実を知り始めている

 私たち「仙台城の石垣を守る会」は今年の4月下旬から石垣を守るための出前講座をはじめました。すでに通算1000人以上の市民が出前講座に参加し、市がいかにいい加減なことをやっているのか、その真実を知りました。残念ながら市民の多くは、現在おこなわれている「青葉山公園整備事業」が歴史を捏造し文化財を破壊する行為だということを知りません。しかし出前講座で真実を知った市民は、こんなとんでもないことをしているとは思わなかった、仙台市民であることが恥ずかしい、なんとかしなければ、と異口同音の印象を語っています。私たちは今後もねばり強く、こうした事実を広く市民に訴えていきます。

学術的見地から徹底的な検討をー艮櫓の根拠を洗い直す

 きょう発足した調査指導委員会は、学術的見地から文化財調査や文化財保護の問題に取り組むということが、共通の認識になっています。政治の思惑とは関係なく、艮櫓問題も純粋に学問的見地からその根拠を洗い直すという姿勢を強力に打ち出しました。頼もしい限りです。どうか行政や政治の圧力に屈することなく、高い見識をもって文化財保護事業を進めて頂けるよう、心から期待しております。

委員会に意見・要望書を提出

 委員会の議事終了後、「仙台城の石垣を守る会」から委員会に対して、次の4項目からなる意見・要望書を提出しました。
1,歴史を捏造する艮櫓の新築をやめさせてください。

2,艮櫓新築による一期石垣遺構の破壊をやめさせてください。

3,一期石垣遺構の全体像を把握する調査を実施してください。

4,国指定史跡をめざすために、国の文化審議会や文化庁の指導をうけて仙台城跡の整備を進めてください。

 また各委員には、これまで「守る会」が市長、石垣委員会、艮櫓委員会に提出してきた質問・要望書も参考資料としてお渡ししました。これで問題点の全貌を理解して頂けると思います。


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TOSHIAKI Yanagihara tyana@sal.tohoku.ac.jp